保健指導室だより Vol.10 2013.3

毎年2月は 生活習慣病予防週間です。

生活習慣病予防に対する国民の皆さんの意識向上と、
健康寿命(日常的に介護を必要としないで、自立した生活が出来る生存期間のこと※)の
伸長を目指して、厚生労働省が毎年2月を生活習慣病予防月間と定めています。

今年のテーマは「生活習慣病を防ぐ ”少食” のすすめ」です。

”メタボ”がクローズアップされ、肥満が不健康のきっかけと言われています。

今回の保健指導室だよりは、生活習慣病予防月間の健康標語”一無・二少・三多”(いちむ・にしょう・さんた)
”二少”の一つ”少食にフォーカスします。

二少(にしょう)って、何?

保健指導室だよりVol.6でもお知らせしていますが、二少(にしょう)とは、小食・少酒の勧めです。
2013年はその”少食”がテーマです。そして、国民から募集したスローガンが、

 暴飲暴食を長年続けていると、肥満や生活習慣病を引き起こすリスクが高まることはご存知の通りです。
 生活習慣病を防ぐという意味では、ご自分の年齢や活動量などに応じた適量を、腹八分目程度に食べるのが健康長寿の秘訣でもあると言われています。
 そんな“少食(腹八分目)”の意識を広め、食生活を見直す機会にしていただければと思います。

出典:日本生活習慣病予防協会 全国生活習慣病予防月間のおしらせホームページ

日本では昔から『腹八分目に医者いらず』と言います。
英語でも「Light Suppers make long life(軽めの夕食は長寿の源)」
という同様の言葉があります。

 もっとも望ましい組み合わせは、主食と一汁三菜、それに果物、乳製品といわれています。よく噛んで、三食を規則正しく食べ、偏食をしないことが大切です。
特に「3つの白を控える」ことと、「食物繊維を豊富に摂る」ことが重要です。
 「3つの白」の一番目は白米・白パンの白、二番目は食塩の白、そして三番目は砂糖の白。いずれも食べすぎ、摂りすぎに注意してください。

腹八分のススメ!

「腹八分目」ってどれくらいか、ご存知ですか?

 腹八分目が体に良い事は誰もがご存知だと思います。でも具体的にはどれくらいかわからない、というのが、本当のところなのではないでしょうか?
 胃は、伸縮性があって、食べ物が入っていなければペシャンコの状態なのですが、食べ物が入ってきて大きく膨らむとなんと1.5~2ℓ(リットル)にもなります。個人差はありますが、1.5~2ℓもの量を満たしていなくても満腹感は感じます。満腹感は量ではありません。
つまり、腹八分目も量ではないのです。

どうすれば満腹感を感じるの?

 満腹感は脳で感じます。と言っても、どのような経路で脳の満腹中枢が刺激されるかは、全て明確になっているわけではありません。しかし、①胃壁の拡張②血糖値の上昇によって満腹中枢が刺激されると考えられています。また、満腹中枢は刺激されるまでに約15~20分かかると考えられています。

  1. 胃に食べ物が入り、胃壁が拡張することによって、内臓に分布している副交感神経の迷走神経が刺激され、脳に信号が伝わる。
  2. 摂取した食べ物(糖類)が分解されて血糖値が上昇することによって脳に刺激を与える。
  3. 腹八分目は、どんな感じ?

     ご承知の通り、満腹になる一歩手前です。満腹感と同様に、胃壁の拡張や血糖値の上昇によって感じます。
     しかし、明確な目途(めど)はありません。「おなかいっぱい!」と感じるのが満腹=腹十分目、「これ以上は絶対無理!」というのは腹十二分目です。「もう少し食べたいな」と感じるくらいの、若干少な目に感じるくらいが「腹八分目」とされています。

    まずは腹八分目より食事の量を減らす事が大切

     腹八分目を感じることなく、気がついたら満腹になっていた!ということはありませんか?腹八分目というのは、本当に感じにくい感覚だと言えるでしょう。
     満腹感を感じるために必要な食事の量が決まっているわけではありません。 
    腹八分目を意識し過ぎて食事の量を極端に減らしてしまっては、ストレスになりますし、続けられません。「腹八分目」を意識しなくても、例えば、ご飯の量の盛り付けを少し減らす、おかずの量を一口分減らす、などしてみるところから始めてみてはいかがでしょう?
    腹八分目にするコツとは???

    よく噛んでゆっくり食べることが大切!

     よく噛むことは、満腹中枢を刺激することにつながります。先にもお話したように、満腹感を感じるには約15~20分かかってしまいます。それ以上に早く食べることは満腹感が得られにくく、食べ過ぎの原因となってしまいます。
     噛むことで食欲を抑制する働きがあるホルモンの分泌が促進されることがわかっています。そのホルモンはレプチンといいます。よく噛んで食べると多く分泌され、食べすぎを防いでくれます。
     ゆっくり食べていると、早食いでは気づかないような程よい満腹感に、気づきやすいかもしれません。一口食べるごとに箸を置くなどして一口5回多く噛む、野菜でボリュームをつける、などの工夫が必要ですね。
    早食いの人に肥満が多い」ことについて保健指導室だよりVol.5でもお伝えしています。ご覧ください。

    例えば、体内時計・時計遺伝子の考え方

     「時計遺伝子」「体内時計」「時間栄養学」これらの言葉を聞いたことがある方も多いと思います。
     睡眠・目覚め、ホルモン分泌や免疫機能、自律神経など人間の生命活動を調節する様々な生理機能は約24時間周期で規則正しく変動しています。これを「サーカディアンリズム(概日リズム)」といいます。「サーカディアンリズム」というのは、約24時間周期で変動する生理現象。動物、植物、菌類、藻類などほとんどの生物に存在しています。英名であるcircadianrhythmは、ラテン語の「約、概ね」を意味するcircaと、「日」を意味するdiesから名付けられました。つまり「概ね一日」の意味です。
     生物の体内時計は、細胞中の時計遺伝子で制御されているのです。
     1日は24時間ですが、実は人間の体は本来約25時間リズム。つまり、体内時計をリセットする仕組みが人間の体には備わっているのです。

    体内時計・時計遺伝子

    グラフ1 体の中には、色々な時計が潜んでいます。1日のリズムを作る主役は脳の中心部にある中枢時計。これは網膜に当たる朝の光でリセットされるのです。そして準主役は内臓や筋肉などにある末梢時計。これは朝食でリセットされます。例えば明るいところでの朝食は、両方の体内時計を刺激し、全身のリズムを調和させます。
     朝起きたら、まずカーテンを開けてください。もちろん晴れていなくても、曇りでも雨でも、通常の蛍光灯の明るさでも大丈夫です。
     又、何も食べずに出勤!ではなく、牛乳1杯でも必要です。体によくないのは、不規則な生活や食事。夕食は朝食ほど体内時計に影響しませんが、遅すぎる夕食はやはり問題です。“太るもと”です。
     下のグラフ1は、消化・代謝を担う「内臓」の活動リズムを示したものです。例えば、すい臓は血糖を下げるホルモン(=インスリン)を分泌する臓器です。この膵臓の働きのピークは15時前後。糖質を含むおやつを摂るならこの時間帯がベストです。また、注目すべきは脂肪蓄積の司令塔、BMAL1(ビーマルワン)が刻む体内時計。BMAL1(ビーマルワン)とは、生活リズムを調整するタンパク質の1種で、体脂肪の増加司令を担っています。このBMAL1が増加すると脂肪の蓄積量が増加するという仕組みです。急増するのが夜9時以降、逆に少ないのが午後3時ごろ。この仕組みからも、夜遅い食事は太りやすく、午後のおやつは太りにくいということになるのです。
    グラフ1
    内臓の活動時計:これは各臓器の働きにリズムがあることを示しています。
    代謝の要である肝臓
    →肝臓の活動ピークは12時前後だから、
     ランチはしっかり食べてOK。

    血糖値調整に欠かせない膵臓は夜間休業。
    →インスリンを分泌する膵臓は15時前後が活動のピーク。
     糖質を含むおやつを摂るならこの時間帯がおすすめ。

    腎臓は夕方以降に機能がアップ。
    →血液浄化に励む。野菜をたっぷり摂って、
     腎臓の浄化活動を応援!






    睡眠時間の少ない人

     体内時計の混乱によって、病気になりやすいこともわかっています。睡眠時間の少ない人は、糖尿病になりやすいという研究結果があります。旭川大などの調査によると、1日の睡眠時間が5時間以下の人は、1日の睡眠時間が7時間超の人より、5倍も糖尿病を発症する率が高いということがわかりました。
     睡眠不足は、交感神経系の緊張をもたらし、血圧を上昇させ、食欲を抑制する物質の分泌を抑えるのです。他にも、うつ病などの精神疾患も生じやすくなります。睡眠不足は、“万病のもと“といえます。規則正しい生活リズムをこころがけましょう!

    時間栄養学

     「何を」「どれだけ」に加えて「いつ食べるか」を考慮した新しい栄養学です。
    そこでは、夜遅くに食事を摂ると太りやすいことなどが明らかになってきました。
    実生活に取り入れるポイントは2つ!

    ①夕食は早めにすませる
    ②朝食をとる
    夕食のポイント

     どうしても夜9時以降になる人は、夕方5~6時ごろに何か食べると、昼からの長い血糖低下が防げます。また、夜食を満腹になるまで食べなくてもすみ、肥満も防げます!!

    朝食のポイント

     朝食は、体の活力を上げてくれます。少なくても乳製品や卵などのタンパク質と野菜、果物などを加えて栄養バランスをよくすると、時計遺伝子をリセットする効果が増します。

    ・この2つを意識するだけで、ダイエットなど様々な健康効果が期待できます。
    ・これに加えて、ウォーキングなどの運動を取り入れると、筋肉量を減らさず、
     基礎代謝も活発になり、体重は減っていく可能性があります。

    トピックス

     近年の肥満に関する様々な研究では、食事による血糖値の上昇が、肥満と結びつくことがわかってきました。血糖値は糖尿病の人のもの、というイメージが強いかもしれませんが、実はダイエットを心がける全ての人に、血糖値の意識は必要なのです。
    「食べる順番ダイエット」「炭水化物ぬきダイエット」の効果がクローズアップされていますが、極端なやり方は心血管疾患の引き金となる危険性もありますので、注意が必要です。人間のからだに必要な、アミノ酸や食物繊維が不足する可能性もあります。
     ご存知のように、食べ物を食べると消化・吸収され、血糖値が上がります。空腹の状態に、消化の良いご飯やパン、麺類などの炭水化物や糖分などを大量にとるような食事が、急激な血糖値の上昇につながり、体脂肪の増加、蓄積につながります。


    肥満や食事時間の関連に詳しい香川靖雄先生(女子栄養大学副学長)のダイエットのコツをご紹介

    食べたいものを食べられないストレスは、
    結果的にダイエットの最大の敵
    だということが解ってきた!

    脳の飢餓感が筋肉や骨などの体組織を減らしてしまい、
    代謝が低下し、太りやすくなるのです。

    負担のかかるダイエットは寿命を短くすることが解ってきた!
    揚げ物などのカロリーの高いものは、日中に食べるほうが太りにくい!
    朝食をとることで、体内時計の正常化につながり、
     脂肪が燃えやすくなるため、やせ体質になれる!

    食事は野菜から食べ始めると体脂肪合成が緩やかになる!
    よく噛んで食べると内臓脂肪が燃えやすくなることが解っている!

     この中でも、食べる順番ダイエットの「野菜から先に」が推奨されているように、野菜を先に食べるだけでも血糖値の急な上昇を抑えることにつながる、ということが注目されています。野菜料理を食べるという習慣がない方も、何らかの野菜を準備しましょう。そういった行動をすることが食べることにつながり、全体的な野菜の摂取量も増え、食事バランスが良くなるのです。

     参考:時間栄養学-時計遺伝子と食事のリズム(日本栄養・食糧学会監修 香川靖雄編著 女子栄養大学出版部) 

    今月のほっとな人

    当センターでは、様々な種類の人間ドックがあります。
    通常は「半日ドック」、これは半日で終えられます。
    そして「一泊ドック」、検査項目が増え、より詳しく検査します。
    体力測定・保健指導もあります!
    他にも、詳細はこちらをクリック!

     先日一泊ドックを受診されたBさん。32歳とお若いのですが、昨年は他院で一泊ドックを受けられるなど、健康意識の高い方です。全てではないのですが、2日目の朝、既に結果が出ている項目について、医師から説明を受け、保健師・看護師等による面談、生活習慣改善支援も受けられました。
     結果はほとんどA(異常なし)B(軽度異常)判定で、安心されました。
     生活面では、仕事・通勤の関係上、帰宅が少し遅くなり、夕食も遅くなる、そして昼食から時間が空いているためか、つい満腹になるまで食べてしまうこともあるとのこと。若いうちは基礎代謝も高く、少し注意(生活習慣の適正化)することで、太らないでいられますが、年齢を重ねる毎に、お腹回りが・・・ベルトの穴がだんだん・・・とならないように、今から注意する必要性などをお話させていただきました。
     全て終わり、帰られる時に感想をお聞きしました。「昨夜泊まったホテルの部屋が最上階で景色が良くて、夕食も豪華(!?)で、満足しました!また来年も来ます」と、お答えいただきました。
     日頃忙しく、“自分のためにゆったりできる、ゆとりのある時間がないなぁ”と感じているあなた!たまには、頑張っているご自分のために、ご褒美として、健診(人間ドック)をゆったりと受けられるのはいかがでしょうか?健診(人間ドック)を受けることは、健康状態を確認するためのあなたの権利です!運が良ければ、ホテルの最上階で、まったりと、豊橋の夜景を楽しむことができるかも・・・

    ※画像はイメージです。