保健指導室だより Vol.8 2012.11

毎年11月14日は「世界糖尿病デー」です!

世界の糖尿病有病者のおよそ半数は、自分が糖尿病であることを知らない!?

 国連が定めた「世界糖尿病デー」名古屋城が、世界共通の糖尿病撲滅運動のシンボルカラーである青色にライトアップされ、夜空に浮かび上がりました。今年も、全世界で一斉にライトアップされました。
 国際糖尿病連合(IDF)は世界の糖尿病有病数は3億7,100万人。1年間で500万人増えたことを発表しました。内日本人は710万人で世界の第9位です

(2012.11.15保健指導リソースガイド 記事)
 平成22年に実施された国民健康栄養調査が最新情報ですが、その無作為抽出の3,684世帯の結果では、
糖尿病が強く疑われる方(30歳以上)※1」は、
 男性17.4% 女性9.6%(グラフ①参照)
糖尿病と言われたことがある方(30歳以上)」は、
 男性16.1% 女性8.8%(グラフ②参照)
と、いずれもそれぞれ10年前(平成12年)の調査に比べて増えています。

グラフ① 糖尿病が強く疑われる方の割合(30歳以上)
グラフ①

グラフ② 糖尿病と言われたことがある方の割合(30歳以上)
グラフ①

※1「糖尿病が強く疑われる方の判定:ヘモグロビンA1cが6.1%(JDS値)以上、
  または質問票で「現在糖尿病の治療をうけている」と答えた方」

平成22年 厚生労働省 国民健康栄養調査 結果概要より

糖尿病って、どんな病気?

2011年11月号(Vol.4)に掲載しております。ご参照下さい。

糖尿病の可能性があるなら早く見つけたい!

今回は、糖尿病を出来るだけ早く見つけ、予防するためのヒケツをお伝えします。

 健診・人間ドックの時の血液検査の項目の中に「糖代謝」とか「血糖検査」という項目があるのをご存知ですか?この数値で診断するものです。お手元の健診結果を見ながら参考にしてください。
 

1 血糖チェックで糖尿病コントロール

食後高血糖とは?

食後高血糖は糖尿病初期の危険サイン
 血糖値は食後に高くなり、空腹時に低下するのが普通です。しかし、糖尿病患者さんの場合、空腹時食後とも血糖値が高い状態が続きます。また、空腹時血糖値が正常、あるいは境界領域内であったとしても、食後の血糖値のみが糖尿病患者さんと同程度(200 ㎎/㎗以上)に上昇することがあります(図1)。この状態が「食後高血糖」です。食後高血糖の状態を放置しておくと、やがて空腹時血糖値も高くなり、糖尿病へと進展してしまいます。

図1 食後の血糖値上昇パターン

食後の血糖値上昇パターン

出典:テルモ「健康ガイド


 

2 食後高血糖と心血管系疾患リスクの関係

IGT(耐糖能異常)と血管障害の関連
 糖尿病が疑われる方に対して行われる検査の一つに、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT:Oral glucose tolerance test)があります。これは、短時間に一定量の75gのブドウ糖水溶液を飲んでもらい、一定時間経過後の血糖値から、糖尿病が存在するかどうかを判断する方法です。ヨーロッパや、中国人、インド人、日本人で行われた疫学調査や臨床研究から、OGTT2時間値が高い方は、心筋梗塞や脳梗塞といった心血管系の病気の発症や死亡率が、健康な方と比べて高いことが明らかになりました。
 詳細な分析結果から、OGTT2時間値が高いことが、心血管系疾患で死亡する重要な危険因子であることがわかりました。空腹時血糖値が110㎎/㎗未満の場合は、OGTT2時間値が140㎎/㎗未満よりも200㎎/㎗以上の方が2倍も高くなっていました。(図2参照)
 これらのエビデンス(科学的根拠)を基に、国際糖尿病連合(International Diabates Federation)IDFは、2007年に食後高血糖の管理に関するガイドラインを発表し、食後高血糖への対応の重要性を喚起しています。

図2 経口ブドウ糖負荷試験 2時間値

食後の血糖値上昇パターン

(DECODE Study Group:Lancet 1999;354:617-624 より作成)

調査・研究:久山町研究・舟形町研究・欧州での疫学調査DECODEスタディ
(Diabates Epidemiology:Collaborative analysis Of Diagnostic criteria in Europe)

参考:「やさしい食後血糖の自己管理」加来 浩平 編 医薬ジャーナル社

 

3 食後高血糖と糖尿病発症の関係

耐糖能異常と食後高血糖
糖尿病が強く疑われる、いわゆる糖尿病型と診断されるのは、以下のいずれかを満たす場合です。

空腹時血糖

126㎎/㎗以上

随時血糖値

200㎎/㎗以上

OGTT※1 2時間値

200㎎/㎗以上

HbA1c※2

6.5%(NGSP値)以上

※1 経口ブドウ糖負荷試験(OGTT:Oral glucose tolerance test)
※2 ヘモグロビンエーワンシー。採血時点から過去約1~2か月間の平均的な血糖値

トピックス

HbA1c

 これは糖尿病の指標として、重要な検査です。血液中にあるヘモグロビンは赤血球内のタンパク質の一種です。ヘモグロビンは肺から血液の中に取り込まれてきた酸素と結合し、全身の細胞に酸素を送る働きをしています。
 血糖値が高くなると、血液中のブドウ糖が酸素よりもヘモグロビンと結合してしまい、グリコヘモグロビン(HbA1c)というものに変化します。
血液中にどれくらいあるか調べれば、血糖値の状況がわかるのです。
日本では今まで日本だけで『JDS値※3』を使用していましたが、世界的に統一すべきという考えで、2012年4月から世界各国と同様の指標の『NGSP値※4』に変わったところです!
 数値は以下の換算式で、計算してください

JDS値 5.0%未満である場合 NGSP値(%)
1.02×JDS 値(%)+0.3%
JDS値 5.0~9.9%である場合 NGSP値(%)
1.02×JDS 値(%)+0.4%
JDS値 10以上である場合 NGSP値(%)
1.02×JDS値(%)+0.5%

通常の場合、これまでのJDS値に+0.4%の数値と覚えると良いでしょう。

※3 JDS Japan Diabetes Society(日本糖尿病学会)
※4 NGSP National Glycohemoglobin Standardization Program

イラスト:メディマグ.糖尿病  



 現在のところ、食後高血糖に、はっきりとした診断基準はありません。しかし、1日の血糖プロフィールは、食事の内容や量に関係なく、60~140㎎/㎗のレベルに精巧に制御されており(図3参照)、140㎎/㎗を超えることはありません。(血糖の恒常性:グルコースホメオスターシス)。したがって、耐糖能異常(IGT:Impaired glucose tolerance)の基準として、日本糖尿病学会では75gOGTTで2時間血糖値が140㎎/㎗以上と定めており、食後血糖も2時間値で140㎎/㎗以上であれば食後高血糖といってよいと考えられます。

図3 軽症2型糖尿病患者さんにおける1日の血糖値推移

軽症2型糖尿病患者さんにおける1日の血糖値推移

腹囲3cm・体重3kg減らそう!

糖尿病患者さんは、少しやせると血糖コントロールが良くなることがわかっています。
もちろん糖尿病と診断されていない方、予備軍、今は異常のない方でも体重を減らす事によって内臓脂肪が減り、検査データが改善する可能性があります!
「腹囲1cm減らすこと=体重1kg減らすこと」と言われています。
体重1kg減らすには、なんと7,000kcalの消費が必要です。

肥満は内臓脂肪型肥満皮下脂肪型肥満に分けられます。 詳しくは2011年5月号 Vol.1 をご覧ください。



 内臓脂肪は単なる脂(あぶら)の塊ではなく、その脂肪細胞からは、様々な蛋白質(アディポカイン)が分泌されています。このアディポカインには動脈硬化性疾患や生活習慣病を促進させる物質と抑制する物質があります。促進させる物質(悪玉)には、TNF-α(ティーエヌ・エフ・アルファ)やPAI-1(プラスミノゲンアクチベーターインヒビター1)があります。抑制する物質(善玉)には、アディポネクチンが挙げられます。TNF-αは動脈硬化巣の形成に寄与し、PAI-1は血中濃度が上昇すると血栓が形成されやすい状態となります。肥満、特に内臓脂肪が蓄積の状態となると、アディポネクチンの血中濃度は低下します。アディポネクチンの血中濃度の低下は、がんや脂肪肝など、多くの疾患に関わっているという報告もあります。
 これらの事から、糖尿病をはじめとするあらゆる生活習慣病の予防・改善には基盤となる内臓脂肪型肥満を無くすことが近道です。
 その為には、「食事量を減らす」「運動量を増やす」といった、いわゆるダイエットが必要です。
より良い生活習慣を身に付けましょう。

 

参考:大塚製薬 気になる病気「必見!脂肪組織の働き」



 糖尿病患者さんの脳梗塞の発生頻度は非糖尿病患者さんの約2倍、心筋梗塞頻度は3倍以上と言われています。動脈硬化の発症には、内臓脂肪が危険因子であり、肥満の是正が重要であることは間違いありません。

そこで提案!まず腹囲3㎝=体重3㎏減らそう!!

 腹囲を1cm減らす事が内臓脂肪を約1kg減らす事に相当します。3cmはベルトの穴ひとつ分に相当し、内臓脂肪を3kg落とすことで、体重が3kg落ちる計算になります。糖尿病の一歩手前の人では、今の体重の3~5%減らせば、ほとんど糖尿病を発生しないという研究結果が報告されています。
 「食事を抜けば、簡単に3kgくらいやせられる」と言う声を聞きます。食事量を減らすだけで急激に体重を落とすと、内臓脂肪だけではなく、筋肉量も同時に減少し、基礎代謝が低下します。その結果、エネルギーを燃やしにくい体をつくってしまいます。更に、ビタミンやミネラルなど、生きていくために不可欠な栄養素が欠乏する可能性があります。何より継続できません。リバウンドも引き起こしやすいといわれています。必ず運動しながら減量することが大切です。減量に成功したら、その体重を維持することを目標としましょう。
 

具体的なお勧めの方法=太る原因を作らないこと

食べる時間

人間の体には体内時計が働き、夜10時から午前2時は、食べた物のエネルギーを脂肪として蓄積する時間となっています。出来れば夜8時以降はエネルギーの多い飲食は避けた方が良いでしょう。

食事の回数と量

「腹八分目がよい」とよく言われますが、食べ方によっては短時間で空腹となります。「おやつを食べたい」という理由で食事を腹八分目にしている人はいらっしゃいませんか?例えば栗まんじゅう1個が約150kcal。体重50㎏の人がこの150kcalを消費するには、早歩きで60分歩く必要があります。腹八分目も“落とし穴”になる可能性がありますね。

食べ方の工夫

まずは野菜から食べましょう。次に主菜や主食、この順番にすると食後高血糖の上昇を抑制してくれます。そしてゆっくり噛んで食べ、満腹感を味わいましょう。肥満の人は早食いという共通点があります。よく噛むと、エネルギー消費量を高めるともいわれています。
味付けが濃いと必要以上にご飯がすすみます。薄い味付けにすれば高血圧の予防にもつながり、一石二鳥!
0(ゼロ)キロカロリーの甘味料やおやつを上手に利用しましょう。また、不足した野菜や過剰な塩分は、後の食事で調整しましょう。
肥満の人は、一度体重が増加すると、やせることをあきらめてしまう傾向にあるようです。その為にも「残す」ことができるかどうか、がポイントになります。

食べたら動く

1日、50kcalだけでも多く摂り続けると、5年後にはなんと体重13kgもUP!!摂取した栄養をエネルギー、筋肉に変えましょう。食後は食器を片づけた後に散歩やラジオ体操をするなど、食べたものをエネルギーとして使うことが必要です。そうしないと内臓脂肪として蓄積されてしまいます。

寝不足は大敵

肥満の人に寝不足、不規則な生活を送る人が多いのです!寝不足はインスリン抵抗性(インスリンという血糖を下げるホルモンの効きが悪くなる!)が引き起こされ、糖尿病の危険性を高めると言われています。夜更かしは過食と寝不足になりやすく、不規則な生活の第一歩です。あなたは大丈夫ですか?

※参考:(社)日本糖尿病協会 月刊糖尿病ライフ「さかえ」2012年11月号

 
これからの年末年始、忘年会やクリスマス、新年会など楽しいイベントがいっぱい!!
「食べたいし、飲みたいけど、あとが・・・」「太るのが心配」「毎年、年末年始には2~3kg太る」という人には、
保健指導室だより2011年10月号(Vol.3)2011年11月号(Vol.4)に掲載しております。ご参照ください。