第206回 知っていますか?大腸がんの今~大腸がんの早期発見・早期治療に向けて検診・検査・治療の最前線~

2012年09月18日

溝口直人 成田記念病院消化器科部長

 わが国の全死亡原因の3割、つまり3人に1人はがんで死亡しています。がんの中で多いのは、平成15年以降は女性では大腸がんが死因の第1位になりました。男性も大腸がんは年々増加し、第4位になっていまが、将来、大腸がんにかかる率(罹患率)は男女とも第1位に、また、死亡率も第2位になると予測されています。
 大腸がんになる年齢は40歳を超えた当たりから急激に増えており、大腸がん検診は40歳を一つの節目に、それ以降の年代の人は年に1回は定期的に大腸がん検診を受けて欲しいと思います。
 大腸がんが増えている原因は、食生活の欧米化だといわれています。総エネルギーの中で、昭和30年代は穀物と炭水化物が7割前後を占めていました。しかし、平成の年代なると、動物性脂肪・たんぱく質が多くなり、総エネルギーの4分の1を占めるようになりました。動物性脂肪・たんぱく質は腸内で発がん性物質に変化するといわれており、動物性脂肪・たんぱく質の摂取量が多くなったことが大腸がんの増加につながっているといわれています。
 大腸がんは早期の段階では症状はほとんどありません。従って、症状のない段階で検診を受けて大腸がんを早期に見つけることが大切になります。ある程度進んだ場合は、貧血、下血、便秘、下痢、便が細くなるなどがあり、検査を受けた結果、大腸がんが見つかることが多いようです。
 大腸がんの検査は、一次検査として便潜血検査、2次検査として注腸X検査や大腸内視鏡検査があります。最近では、造影剤を使わずに注腸X線検査と同じ画像が得られる64列マルチスライスCT検査があります。この64列マルチスライスCTは当病院にも導入されていますが、現在は特殊な症例に限って使っています。話題としては、カプセル内視鏡やペット((PET・陽電子放射断層撮影)があります。
 大腸がんの治療は、ポリープがあった場合は、内視鏡を使って切除する(ポリペクトミー)のが治療の基本です。粘膜が盛り上がってない場合は、生理食塩水を注入して切除する内視鏡切除的粘膜切除術(EMR)があります。
 内視鏡切除ができない場合は、手術になりますが、新しい手術法としては、お腹に数か所の小さな穴を開けて腹腔鏡で切除する腹腔鏡手術があります。
 大腸がんの予防法は、①動物性脂肪、赤身肉、貯蔵肉を摂り過ぎない②肥満やアルコールの摂り過ぎに気をつける③定期的に運動をするなどです。