第192回 救急のかかり方

2012年04月12日

笹井冠奈 成田記念病院循環器科部長

 「昨日から咳が出て熱がある」「朝から下痢、おう吐でトイレに行ったり来たりしている」「健診で高血圧を指摘されたけど放置している」「自宅で転んでねんざしたけど歩ける」。このように風邪をひいたり、健康診断で異常を言われたり、自分で歩けるような状況では、救急車を呼ぶ必要はありません。自分で、普通の時間帯に専門の医師のいる医療機関を受診すればよいと思います。  「冷や汗の出るほどの胸痛」「突然の激しい頭痛」「急に倒れて体の片側が動かない」。こういった場合は、急性心筋梗塞、クモ膜下出血、脳卒中、不整脈など緊急処置が必要な病気のため、直ぐに119番通報した方が懸命です。  119番通報した場合は、慌てずに指令センターからの問い合わせに一つずつ確実に答えることが大切です。そうすることが迅速に患者さんを医療機関に収容することができます。  119番通報する場合は自宅の加入電話か、公衆電話だと、指令センターの画面に自宅や公衆電話の場所を示す地図が表示され、直ぐに一番近くの救急隊に指令がかかり駆けつけます。携帯電話からでは指令センターの画面には地図が表示されないため、必要以上に時間がかかってしまいます。従って、119番通報する場合は携帯電話ではなく、自宅の加入電話か公衆電話がよいです。  救急車のサイレンが聞こえたら、自宅から出て救急車を誘導してください。また、救急車が来る間に保険証、服用薬、かかっている医療機関の診察券などを用意し、さらに患者さんを運び出すバックボードがスムーズに動かせるように部屋にある荷物などを片付けておくことも大切です。  救急隊員は患者さんに「いつからこの症状があるか」「アレルギーはあるか」「どんな病気の治療を受けているか」などいろいろなことを質問します。こうした情報は搬送先の病院へ伝えられ、治療に欠かすことのできない重要な情報源となります。情報収集の無駄な時間を省くためにも、療養中の患者さんは日頃から、経過などに関するメモを用意しておくことも重要です。  また、救急車の出勤件数は年々増えています。救急車で行けば早く診察してもらえるなどの理由で救急要請される方がみえますが、1分1秒を争う治療を必要としている患者さんへ向かう救急車が不足し、適切な処置や搬送ができなくなり、命にかかわる事態にもなるため、救急車の適正利用が大切です。  重症な場合は、直ぐに119番通報、軽症な場合は、普通の受診をしてください。