第205回 こんな方法があった!?痛みと漢方 知って得する漢方薬の豆知識

2012年09月17日

大沼哲朗 成田記念病院麻酔科部長

 皆さんの中には、漢方薬を誤解されていることもあるようなので、漢方薬の基本的なお話をしたいと思います。
 まず、漢方薬は「中国の薬か」ということですが、確かに漢方薬は中国から伝わってきました。ただ、現在の中国と日本の漢方薬とでは、その内容は全然違います。例えば、中国で漢方薬と言っても通じません。中国では漢方薬のことを「中薬」と言い、日本とはちょっと異なり、また、考え方も違います。
 日本の漢方薬は、先人達がいろいろと工夫を積み重ね、日本人に合わせて作り上げた日本独自の薬なので、現在保険で認められている漢方薬は、150種類以上あります。
 漢方薬は、アレルギー、ストレス、冷えといった現代病に対して得意とするところで、西洋薬より著効を示すことも数多くあります。
 漢方薬は「副作用がなく、安全だ」と思われています。しかし、漢方薬でも、人の話を鵜呑みにして服用したりすると、副作用が出ることもあります。漢方薬は、同じ症状、同じ病気でもその人の体質によって効果が異なるので、人の話を鵜呑みにして服用することは避けなければなりません。
 漢方薬は、その人の「証」、つまり、体全体のバランスを診て処方されます。西洋薬は、症状、病気を診て薬が処方されます。ここが、漢方薬と西洋薬と大きく違っている点です。
 痛みの中でも慢性痛みは体の全体のバランスを整えることで解消するケースが多く、漢方薬が効果を発揮することもよくみられます。また、痛みに対してあまり神経質にならないことも大事です。
 漢方薬は、経験上使われているのであって、科学的な裏付けがないのではないかということをよく聞きます。これに対して現在、漢方薬も科学的な裏付けを取るための研究が精力的に行われていますが、その成果は現れており、今後、漢方薬は、今以上に治療の現場に積極的に用いられてくると思っています。