第198回 当院における医療事故防止対策について

2012年04月18日

神谷厚 成田記念病院副院長

 今回は、特に1999 年に起こった横浜市立大学病院での手術患者取り間違えの医療事故以降、マスコミなどの報道もあって医療不信が増長しています。しかし、カルテを後で書き変えたり、医療事故を隠ぺいしたりするような悪質な医療機関や医師は、全体の中ではほんの一握りであると思います。ほとんどの医師・看護師は、患者さんのために日夜まじめに医療に取り組んでいる、という事実をまず理解していただきたいと思います。病院の医師や看護師は、国の医療費抑制政策の影響で、人手不足のために疲労の限界にきています。医療事故は、医師や看護師といった1個人を非難するばかりでは解決するものではありません。医療事故の背景に潜む仕組みを明確にし、それを根本から解決しないと医療事故の防止にはつながりません。
 病院では、「人間はエラーを起こす生き物である」という大前提に立って医療事故防止対策を行っています。医療事故にまでつながらなかったが「ヒヤッとした」事例を 医師、看護師、薬剤師、検査技師、放射線技師、リハビリなど病院内のすべての部署からレポートをその都度提出してもらい、これを分析し、今後の医療事故止対策に役立てています。昨年1年間で 760 件のレポートが集まりました。レポートの内容で毎年多いのは、「転倒・転落」や「薬にかかわる事例」で、国の病院からの報告と同じよな傾向です。院内でこのような業務の中心を担っているのが、医療安全管理室で、専属スタッフも常駐しています。
 医療事故防止の具体策としては、外来の患者さまに診察券を提示してもらったり、名前や生年月日を言っていただいたりして本人確認をしています。また、入院患者さまや外来で手術を受けられる方には、リストバンドといって手首に付けるビニール製の小バンドで、それに患者さまご自身に名前や生年月日を書いてもらい、そのバンドを手術室でも病棟でも常時付けてもらって本人確認の手段としています。