第176回 メタポリックシンドローム

2012年03月27日

成田記念病院腎臓内科部長 大林 孝彰
第176回 H17.07.27    
アメリカでは以前から脳梗塞などの虚血性心疾患の予防の観点からどのような人たちがなりやすいかを研究してきました。  その結果から様々な危険因子(高脂血症、高血圧、内臓肥満、高血糖など)を持つ人は、危険因子を持たない人に比べ数倍心筋梗塞を起こしやすいことがわかってきました。そのような危険因子を数個持つ人々をメタポリックシンドロームと呼ぶようになりました。しかし、その診断基準はまだ各国で統一されていません。  2005年4月8日に日本内科学会総会で、わが国のメタポリックシンドロームの診断基準が発表されました。  それによるとウエスト径が男性で85㎎以上、女性で90㎎以上であることが必須で、その他収縮期血圧が140Hg以上、または拡張期血圧が85Hg以上、中性脂肪が150㎎/dL以上、またはHDLコレステロール40㎎/dL以下、空腹時血糖110㎎/dL以上のうち2つ以上を有する人をメタポリックシンドロームと診断するとしています。  しかし、これも絶対的なものではなく、今後変更されることが予想され、あくまでも目安と考えた方がよいとされています。  京都大学の伊藤先生は、メタポリックシンドロームをドミノ倒しに例え、肥満によりインスリン抵抗性が起こると次に糖尿病、高血圧、高コレステロール血症などが起こり、これに動脈硬化が大きい血管で起これば心筋梗塞、脳梗塞、四肢壊疽などが起こり、小さい血管で起これば網膜症、腎不全、神経症などがドミノが倒れるように病気が進展するとし、これをメタポリックドミノと呼ぶことを提言されています。

成田記念病院季刊誌「おだいじに」No.54より