第161回 前立腺癌の早期発見

2012年03月12日

成田記念病院 泌尿器科医長 竹内 宣久 第161回 H16.4.14

 前立腺癌は、高齢者の男性に多い癌で、1950年には人口10万人に対して0.5人だった前立腺癌が1997年には8.2人で、約16倍と他の癌に比べて増加率は高く、ここ数年増加傾向にあります。年齢別では70歳、80歳代に罹患率が高くなっています。アメリカではすべての癌の中で前立腺癌の死亡率は肺ガンに次いで2番となっています。
 前立腺癌の症状は進行すると血尿、腰痛などがありますが、早期の場合は特にこれといった症状はありません。
 診断はスクリーニング(振るい分け)法としてPSA(前立腺癌かどうかを調べる血液検査)検査、直腸診、経直腸的超音波診断などがあります。
 これらの諸検査で前立腺癌が疑われると確定診断のため、針生検(針で組織の一部を採取して調べる病理検査)などを行い、これらの検査で癌と分かるとC T、MRI、骨シンチなどで癌の広がりを調べます。
 前立腺癌の治療は早期の場合は前立腺全摘出術が行われます。このほか放射線療法、ホルモン剤や抗がん剤などを使った薬物療法が行われます。
 昨年1年間当成田記念病院で102例の前立腺の針生検を行いました。年齢は40歳から90歳、検査前のPSA値は4.3から2 5 5 0で、病理検査をした結果、良性は52例、癌は50例でした。PSA値(正常値は4以下)が4から10のグレーゾーンでは52例中17例(約33%)が癌でした。PSA値が10から20では50%が癌でした。
 PSA値が高くなるにつれて癌の陽性率も高くなり、100以上だと全例癌で、PSA値と癌との関係は一致しており、PSAは前立腺癌の早期発見法として有効だということが分かりました。

成田記念病院季刊誌「おだいじに」No.49より