第139回 放射線と放射線治療について

2012年02月18日

名古屋市立大学 医学部放射線医学教室教授 芝本 雄太 第139回 H14.6.27

 放射線とは、熱線、可視光線、紫外線、X線の総称です。このうち、X線、ガンマー線などが医療でよく使われる電離放射線です。放射線の中でX線は、1 895年にドイツのレントゲン博士が発見しました。翌年にはフランスのベクレル博士がウランの化合物が自然に放射線を出していることを発見、それから2年後には、キュリー夫妻がラジウムが自然放射線をだしていることを発見しました。このようにこの3年間で放射線に関する重要な発見がされたことで、放射線医学は飛躍的に進歩しました。
 放射線の診断でどのくらいの放射線の量を浴びるかといえば、自然界からでも1年間2・4ミリシーベルトの放射線を浴びていますが、胸部の?線写真を撮影すると、0・1ミリシーベルト、CTや消化管撮影でも自然放射線と比べてそれほど多い量ではありません。
 放射線治療は、放射線を照射して生命維持に重要なDNAの鎖を切り、修復を不可能にし、細胞を殺して治療する方法です。放射線治療にはいくつかの方法がありますが、主なものは外部照射で、それ以外には病巣に放射線を出す線源を当てる方法があります。
 治療対象は、主にすべての臓器の悪性腫瘍ですが、良性の腫瘍や動静脈奇形、心臓冠動脈狭窄の治療にも用いています。放射線治療は、痛みを取る緩和にも使いますが、真の目的は根治治療です。腫瘍の治療に対する各種治療の貢献は一番が手術で、次いで放射線療法が3割近くを占めています。放射線療法は腫瘍に対し集中して照射する新しい照射方法が開発されており、今後ますます進歩し、大きな効果を発揮することが期待されています。

成田記念病院季刊誌「おだいじに」No.42より