成田記念陽子線センター
陽子線治療は、様々な高度な技術を駆使して、がんへピンポイント照射することが可能です。成田記念陽子線センターには、世界で最も陽子線治療装置の販売実績を持つメーカーの最新の陽子線治療装置が導入されています。この装置によって、世界最高水準の陽子線治療を患者さまへ提供することが可能です。
その一方、高品質の陽子線治療を患者さまへ提供するためには、陽子線治療装置が持つ高度技術を安全に利用できるような品質保証業務や品質管理業務、また、この高度な装置を十分に扱うことが可能な多職種の専門スタッフが必要不可欠です。成田記念陽子線センターには、スキルの高い専門スタッフが充実しており、日々、患者さまへ高品質の陽子線治療を安全に提供することに努めております。(顧問 西尾禎治)
陽子線治療は、照射技術の革新や装置の新規開発などにより現在も日々進歩しています。そのため、高度で複雑化した陽子線治療の品質を適切に管理しなければ、安全な治療を実施することができません。たとえば、陽子線が狙った位置から外れたところに当たってしまったり、意図した量の陽子線が実際には当たっていなかったりすることは避けなければなりません。国内および国外の専門機関から品質管理に関するガイドラインが示されていますので、私たちはそれらに従うことによって一定基準を満たした品質を維持するよう努めています。
ここでは、当施設の陽子線治療の品質管理を中心に紹介していきたいと思います。
陽子線治療は、複雑で高度な技術によって実現されるため、専門的な知識を有したスタッフが品質管理を行う必要があります。当施設では、各関連団体より以下の専門資格の認定を受けたスタッフが担当しています。
・治療専門医学物理士 (一般財団法人 医学物理士認定機構)
・医学物理士 (一般財団法人 医学物理士認定機構)
・放射線治療品質管理士 (放射線治療品質管理機構)
・放射線治療専門放射線技師 (一般社団法人 日本放射線治療専門放射線技師認定機構)
・放射線取扱主任者 (原子力規制委員会)
また、大阪大学大学院医学系研究科 教授の西尾禎治先生に外部顧問として当施設の品質管理について評価を受けています。
当施設の陽子線治療は、ペンシルビームスキャニングという照射方法により陽子線を病気のところに照射しています (「陽子線の特徴」ページ参照)。名前のとおり、細いビームで病気のところを塗りつぶしていくように照射していきますので、一つひとつのビームが狙った位置を照射することが大事になります。
そこで、今回は実際に狙った位置を照射できていることを簡単に確認した動画をご覧いただきたいと思います。動画にあるオレンジ色のシートは、陽子線 (放射線) が照射されるとその部分が黒くなるという特徴があります。照射したい文字が赤いマジックで書かれたシートをあらかじめ決まっている位置にセットして、実際に照射した動画になります。きちんと赤いマジックで書かれた文字の上を陽子線が照射されていくのがわかると思います。
このように、狙った位置に対してきちんと照射できていることを日々管理しながら、陽子線治療を実施しています。
陽子線治療を含む放射線治療では、病気のところに照射する放射線の量がとても大事になります。治療のために必要となる適切な放射線の量は、国内および国外で蓄積された治療成績や研究結果などから決定することが多いと思います。そのため、自施設の放射線の量を正しく管理しなければなりません。
たとえば、“2.0 Gy” という量の放射線を出しているつもりでも、実際に機械から出てくる放射線の量がA施設では “1.8 Gy (-10%)”、B施設では “2.2 Gy (+10%)”などと施設によって異なると、患者さんが受ける放射線の量がばらばらになってしまい,安全な放射線治療を受けることができなくなる恐れがあります。
私たちは、安全な陽子線治療を実施するために、アメリカの専門機関により定期的な第三者評価を受けることにより、自施設の放射線量の管理を適切に行っていることを確認しています。
当施設は、「安全かつ高精度の放射線治療を推進すること」を目的とした施設基準を満たしているとして日本放射線腫瘍学会より認定施設として登録されています。患者さまに安全な陽子線治療を提供できるようにスタッフは日々研鑽に努めています。
陽子線治療の流れに関する概要は別ページに記載されていますので、ここでは実際の陽子線治療に焦点をあてて作成した動画をご覧いただきたいと思います。