愛知医科大学 形成外科教授 青山 久 第119回 H12.10.27
私は形成外科に携わって30年になります。この間「より美しく治す」ということを常に考え、取り組んできました。
一昔前は、顔などにアザがあると、顔の皮膚を大きく切り取って植皮したために治療後顔に傷が残りました。そのために手術をしない、治療を受けないという人が多くいらっしゃいました。このため、私はこの30年年間、「どうしたらきれいに手術することができるか」、また「治すことができるか」ということばかりを考えてきました。
現在は顔に出来たアザの治療はレーザーの照射で全部きれいに治すことができるようになりました。患者さんが一番心配している顔に残るレーサー照射後の痕は時間の経過とともにきれいになり、ほとんど分からなくなります。
私は最初からシミやアザの治療をしていたのではありません。主にやけどや子供のアザの治療を行っていました。私の病院に高年齢の患者さんが顔のアザの治療に見えるようになりました。ヤケドや子供の顔のアザの治療で手一杯だったため、治療を断っていました。しかし、ある日、診察に訪れた50歳代の女性が「私は何十年と自分の顔のアザを化粧で隠してきた。友人となどから『温泉に行こう』と誘われても顔のアザがあるので断り続けてきた。自分の人生は顔のアザを隠すことでした。何とかしてほしい」と切実な悩みをせつせつと話されました。
その名無しを聞き、「かわいそうだ。何とかしてあげたい」という思いにかられ治療をおこないました。以後そうした中高年の患者さんのアザやシミの治療をするようになりました。
治療はレーザーを照射して治しますが、患者さんは治療後の自分の顔を見て「心が晴々した」、「ホッとした」「世の中が明るくなった」と、化粧で隠すことが必要なくなったことや、それまでの心の重圧から解法された喜びを素直に話されます。レーザー治療の副産物としてアザだけではなく、小ジワもきれいにとれるので、若返り、みなさんニコニコされます。
また、顔のシミを何とかしてほしいという中高年の女性が主人と一緒に診察にみえました。私は「顔のアザにく比べたらシミの治療はしなくてもよいのでは」と思いました。しかし、ご主人が「妻がスーパーに買い物に行った時に口の悪い人から『シミのおばさんが来た』と、嘆きの話をされました。
その話を聞き、「シミも美容的なものではなく、本人にとっては社会的に大きな問題だ」ということがわかり、シミの治療をするようになりました。シミの治療は私の長年の治療経験からすればそんなに難しい治療ではありません。
顔のアザやシミなどに対して私はそんなに重要な問題ではないと軽く考えていました。しかし、患者さんの話を聞いた結果、本人にとって精神的な負担が大変大ききことを痛感しました。
顔にアザやシミのある人が美容外科や美容形成で治療を受けると何万円、何十万円とかかることがあります。そうした中高年の患者さんを救済するのも医師の勤めだと考え、より安く治療をしてあげようと考え、約7、8年前から、悩める中高年を治す外来である「美しき中高年(クリニック・ビューティフル・エイジング)」を週一回行っています。
これまで何千人の中高年の患者さんを治療しましたが、そのほとんどの患者さんは喜んでおられ、医師としては患さんの明るい笑顔を見ることが一番の喜びで、私としても良かったと思っています。
レーザー治療は1回か2回でたいていのアザやシミは治ります。シミはいくらひどくてもアザに比べると治療は簡単です。レーザー治療の費用は1回1万円前後で済みます。治療時間は10秒くらいです。
実際にレーザー治療をする前に患者さん自身にどこが気になるかを書いてもらいます。これは患者さんの気持ちと医師の見立てが異なるからです。たとえば医師は、「ここだろう」と思っても患者さんは「ここ」と思っているところと違った所を指摘します。その患者さんの指摘に従ってレーザーを照射します。そして、レーザー照射っが終了すれば患者さんに確認してもらい、納得していただければそれで治療は終わりです。
レーザー治療後、きれいになえう患者さんは一ヶ月ぐらいできれいになります。ところがなかには色がつく患者さんがいます。3分の2は白くなり、3分の1はいったん濃くなります。しかし、濃くなった患者さんでも半年もすればきれいになります。
今、中高年の女性をターゲットにした何万円もするシミ取りの化粧品や何十万もするシミ取り治療があるので十分注意してほしいとおもいます。
成田記念病院季刊誌「おだいじに」No.35より