第115回 慢性腎炎について

2012年01月25日

慢性腎炎について
明陽クリニック 院長 鶴田 良成 第115回 H12.6.28
 
 腎炎に対する治療がこの10年くらい前からうまくいっているため、腎炎が原因で透析を受ける患者さんはここ3年減ってきています。
 腎臓には多くの働きがありますが、中でも重要なのが老廃物を排出する機能です。腎臓の中にある糸球体の中のメサンギウム細胞が増加して糸球体を潰したり、基底膜からたくさんのたんぱくが出てネフローゼ症候群を起こすなど糸球体を場にしていろいろな障害が起きる病気が腎炎です。
 腎炎の診断としては、たんぱく尿が出ている場合は生理的たんぱく尿なのか、病的たんぱく尿なのかを調べ、病的たんぱく尿、つまり糸球体たんぱく尿だと慢性糸球体腎炎の可能性が疑われます。次に慢性腎炎症候群なのか、ネフローゼ症候群なのか腎臓病型を調べます。このほかCT、血液検査などを行いますが、確定診断するやめには、腎臓の組織の一部を採取し、顕微鏡で詳しく調べます。これを腎生検といいます。
 慢性糸球体腎炎の中で、日本人に一番頻度が高いのがIgA腎症です。この病気の特徴は比較的若い人に多く、血尿が主体でたんぱく尿を伴うことがあります。
 このIgA腎症が今警戒を要する疾患として注目を浴びています。というのは、IgA腎症は予後が不良で、約20年の間に三割から四割のひとが透析に移行するからです。すなわちIgA腎症と診断された約500人の患者さんのうち腎生存率は10年では8割5分正常でしたが、20年になると6割しか腎臓は機能していなく、4割は腎移植やCAPD、透析に移行いており、IgA腎症が怖い病気で有ることが最近分かってきました。
 たんぱく尿、血尿があっても多く場合は全く問題なく経過します。腎炎になる本当の原因はまだはっきりとは分かってません。腎炎の患者さんのうちたんぱく尿が多いと腎臓の働きが低下し、さらに血圧の高い人は要注意です。
 適度な運動をしたり、睡眠を十分に取り、規則正しい生活が求められます。

成田記念病院季刊誌「おだいじに」No.34より