第204回 冬のウイルス感染予防~感染性胃腸炎・インフルエンザを中心に

2012年09月15日

三浦由江 成田記念病院感染対策看護師

 ウイルスは、100㌨・㍍(1㌨・㍍は100万分の1㍉の大きさです)以下のものを言いますが、ウイルスは、微生物の中でも一番小さいと言われています。
 感染性胃腸炎の原因ウイルスであるノロウイルスは、35㌨・㍍から40㌨・㍍、インフルエンザウイルスは100㌨・㍍くらいなので、私たちの目には全く見えません。それだけにウイルスはやっかいなものだといえます。
 感染性胃腸炎を引き起こすウイルスの中で冬に多いウイルスはノロウイルス、ロタウイルスですが、今日はノロウイルスについてお話をします。
 ノロウイルスは、乳幼児から高齢者の人まで感染します。
 症状としては、嘔吐、下痢、腹痛、筋肉痛、頭痛などで、発熱もありますが、発熱は軽いものです。便は水様性で、本当に水のような下痢です。血便はありません。
 感染源としては、生の二枚貝などの貝類や便や吐物を介して人から人へ感染します。潜伏期間は、1日から3日くらいで、後遺症は特にありません。ただ、1回感染したらもう感染しないというものではなく、繰り返し感染することがあります。
 ノロウイルスに対して直接効果のある薬剤はありません。下痢をしているからといって下痢止めを飲むのは止めた方がよく、なるべく便と一緒にウイルスを排泄した方がよいです。
 ノロウイルスは経口感染で、腸内で増殖し、酸に強く、ウイルスの量は少なくても感染します。そのため、少し手に付着していても感染します。集団感染の多くのケースは、手に付いていたノロウイルスからの感染です。
 ノロウイルスに対する予防法は、トイレの後、調理をするとき、食事の前などには、しっかりと手洗いをすることです。さらに、直接便や吐物に触らないこと、飛び散ったノロウイルスを吸い込まないことなどです。まな板、包丁、布巾などはよく洗浄し、熱湯などで消毒して下さい。食品を加熱、調理するときは、中心部の温度は85度で、1分以上必要です。
 二枚貝や生の魚を食べる場合は、生食品の表示を確認して調理して下さい。下痢、嘔吐のある人は、調理をしないことが望ましいです。
 ノロウイルスは、お腹の中に2~3週間、長い人では、1か間存在すると言われているので、症状がなくなっても手洗いなどはしっかり行ってください。