第174回 レーザーを用いた前立腺肥大症に対する新しい手術

2012年03月25日

成田記念病院 副院長 平林 聡 第174回 H17.5.25

 腎臓で作られた尿は尿管を通じて膀胱に溜まり、前立腺の中の尿道を通って排出されます。前立腺肥大症は前立腺全体が肥大するのではなく、前立腺に属する移行帯が肥大する前立腺移行領域の良性腫瘍です。
 前立腺肥大症の症状は尿が出にくい、尿の線が弱い、夜中の排尿が2回以上あるといった排尿困難、排尿したにもかかわらずまだ尿が残っていると思う残尿感、それに尿もれなどです。こうした症状が起きると日常生活にいろいろな影響を及ぼします。例えば旅行や外出前に水分の補給を控えたりしますが、水分を控えると脳こうそくのリスクは高くなります。それと、夜中にトイレに何回も行くために寝不足になります。ゴルフなどトイレのないアウトスポーツに参加できなくなるなど社会活動がかなり制限されます。
 前立腺肥大症は40歳代から起き、75歳になると80%以上がこの病気になります。ただ、実際に症状が現れるのは60%前後です。
 前立腺肥大症の治療は、漢方薬、ホルモン剤といった薬による治療のほか、手術、レーザーによる高温度治療、温熱療法など多種多様な治療法があります。   
当院では、1年前から、内視鏡とレーザーを併用した新しい前立腺肥大症の手術を手がけ、これまでに50人の患者さまの治療を行いました。この新しい治療法は尿道から内視鏡を挿入して、肥大している移行帯だけを切除し、血管は高エネルギーのレーザーを照射するので、出血は少なくてすみます。
 新しい治療法の特徴は、①確実に肥大している移行帯が切除できる②開腹しないので手術後の回復が早い③痛みは少ない④入院期間も短くてすむ⑤社会復帰も早くできる—などです。
 これまでの治療法に比べ結果も同等で、安全で、メリットが大きいといえます。デメリットは、手術後の尿もれがやや多いことですがほとんどの患者さまは数カ月以内に改善しています。

成田記念病院季刊誌「おだいじに」No.53より