第163回 ピロリ菌—最近の話題—

2012年03月14日

ピロリ菌—最近の話題—
成田記念病院 消化器科医長 木村 吉秀 第163回 H16.6.25

 ピロリ菌(ヘリコバクタ・ピロリ)は、胃の中の幽門粘膜にたくさん生息しています。胃の中は非常に強い酸性になっているので、通常細菌は生きられません。しかし、ピロリ菌は胃の中でウレアーゼという酵素によって生成される尿素・アンモニアを利用して菌の周りをアルカリ性にすることで、胃酸を中和しているので生きることができます。
 ピロリ菌の感染源は現在のところはっきりしておらず、感染源を完全に防ぐことは困難です。ピロリ菌に感染すると、まず、表層性胃炎という軽い胃炎になり、その中の一部が進行して胃粘膜が委縮した委縮性胃炎になり、更にその一部が胃潰瘍や胃ガンなどになります。
 日本の中高年の70%から80%がピロリ菌に感染していますが、その中で胃潰瘍にまで進行するのは約2.3%です。
 ピロリ菌が胃粘膜障害に関与している場合、除菌治療を行います。1日2回、1週間1種類の酸を抑える薬と、2種類の抗菌薬(抗生物質)を服用します。1カ月後にピロリ菌が死んだかどうかの判定を行い、ピロリ菌がいなければ治療は終わります。除菌成功率は70%から80%です。ピロリ菌がいれば再度除菌治療を行います。治療上大切なことは必ず3種類の薬を飲むことです。途中で止めたりすると耐性をもったピロリ菌が現れ、除菌率は低下します。
 副作用で多いのが軽い下痢です。しかし、この程度であれば最後まで薬を飲んでもよく、飲み終えれば症状はなくなります。発熱、腹痛、それに下痢便に血が混じったりするとよくないので服用を止めて受診してください。
 除菌しても10人に2人から3人はピロリ菌は死にません。こうした患者さまは保険医療で再度同じ薬で除菌治療を行いますが、除菌率はよくて50%前後です。二次除菌治療でも死なない場合、保険適用外ですが、多剤の使用にてうまくいく場合があるので一度医療機関に相談してください。

成田記念病院季刊誌「おだいじに」No.50より