第159回 重症急性呼吸器症候群(SARS)の現状

2012年03月10日

藤田保健衛生大学医学部助教授 坂文種報徳会病院呼吸器内科 堀口 高彦 第159回 H16.2.27 

 サーズは新しい感染症であることから新興感染症といわれ、新しい遺伝子を持ったコロナウイルスであることが確定しました。
 サーズは、2003年2月21日に中国の広東省でサーズに感染した医師(男性)が香港のホテルに宿泊し、同じフロアにいた8人を含む宿泊者10人が感染しました。感染者が帰国したベトナム、シンガポール、アメリカ、カナダなどで感染が拡大し、世界のサーズの患者数8,0 9 8人のうち774人が亡くなっている恐ろしい感染症です。サーズによる致死率はWHOによると15%前後となっています。
 WHOのサーズの症例定義によると、疑い例としては2002年11月1日以降に発症して以下の項目を満たすもので①38度以上の発熱②咳、呼吸困難③発症前10日以内に以下のうち一つ以上の暴露歴があるサーズの疑い例か可能性例と濃厚な接触がある連破確認地域に旅行歴がある連破確認地域に居住していた。
 可能性例としては、疑い例で胸部レントゲン写真上肺炎または呼吸器症候群の所見があるなどです。
 感染経路はタンの飛沫感染、接触感染が主経路で、サーズウイルスは約1ヵ月間患者の咽頭、糞便、尿から検出され、室温では1日から2日間感染力を維持します。臨床症状はインフルエンザとほとんど似た症状です。発症年齢は大多数が健康成人で、25歳から70歳、15歳以下は少ない——というのが大きな特徴です。潜伏期間は2日から10日、3日から7日後に下気道症状、呼吸器困難、低酸素となり、症例の10%から20%が重症呼吸器不全に陥り、人工呼吸器管理が必要となります。
 サーズの治療は確立されたものはなく、感染対策としてはきめの細かいマスク、ゴーグル、フェイスチールド、ガウン、手袋などを着用するなどがあげられています。なぜ日本人にサーズ感染者がいないかといったことは今後の検討課題だと思います。

成田記念病院季刊誌「おだいじに」No.49より