第145回 我慢してはいけない、しつこい痛み

2012年02月24日

浜松医科大学 名誉教授 池田 和之 第145回 H14.12.25

 痛みの研究と治療に取り組んで44年になりますが、私自身帯状疱疹、腰の痛みなど幾つかの神経痛を経験しています。痛みに対する私の克服法を紹介しながら痛みについてお話をします。
 痛みとは「体に異常が起きている」という警告で、痛みを感じないことは逆に危険なのです。痛みはもともと自覚症状なので周りの人にはあまり理解されず、怠けていると思われるケースが多く、結局本人は痛みを我慢しなければなりません。しかし、この我慢が治療上大きなマイナスになります。痛みには急性痛と慢性痛があり、急性痛の段階で治療しなければ慢性痛になり、治療に難渋することになります。
 痛みは放置すると、増幅され、神経に記憶として残ります。また、痛みが起こると、痛みの悪循環が始まります。こうした二つが慢性痛の原因となるので、痛みは我慢しないで初期の段階でしっかりとした治療をしなければなりません。
 痛みに対する治療は、急性期の段階で痛みを遮断することが中心になります。
 炎症を抑制するアスピリンなどの非ステロイド系の鎮痛薬、ステロイド、ケイレンを抑える薬、抗うつ薬などによる薬物療法、物理療法、神経ブロック療法などいろんな痛みを軽減する治療法があり、それなりに効果を上げています。
 痛みの治療は、痛みの原因を正しく理解することから始まります。
 そのためには医師に聞いたり、痛みに関する本を読み、痛みとはどういったものなのかを知ってください。そうして痛みの治療法について理解することが大切です。
 痛みは自分の病気なのです。他力本願ではなく、自分で痛みに立ち向かい、治すという強い意志を持つことが求められます。
 私は、痛みが起きると早めに治療をしました。
 そして痛みと真っ正面から立ち向かい、「自分で痛みに打ち勝つのだ」という信念を持って痛みを克服してきました。

成田記念病院季刊誌「おだいじに」No.44より