第141回 腎炎は治る―IgA腎症の根治治療

2012年02月20日

仙台社会保険病院 腎臓疾患臨床研究センター部長 堀田 修 第141回 H14.8.23

 現在、全国で約22万人の患者さんが慢性維持透析を受け、毎年新しく約3万人の患者さんが透析導入となっています。このため、透析医療費が問題になっており、今後透析医療はかなり締め付けが厳しくなり、透析の医療の質が悪くなることが懸念されます。
 慢性糸球体腎炎、糖尿病性腎症によるものが透析導入の2大原因疾患です。特に、糖尿病性腎症が最近顕著に増加していますが、今日は慢性糸球体腎炎の話をします。
 この慢性糸球体腎炎の半分以上の病気は、IgA腎症で、体の外敵から守る、体にとって大切なタンパク(免疫ブログリン)であるIgAが糸球体のメサン
ギウムに沈着して炎症を起こす病気です。
 症状は、最初に必ず出る所見としては血尿があります。
 私のところで行っている治療法は、へんとうを摘出し、ステロイドパルス療法を行います。この療法は、ソルメドロール500mgの点滴を3日間投与し、その後、飲み薬のステロイドを12カ月間服用します。早期にこの治療法を行えば8割以上の患者さんがタンパクも血尿も消えます。血尿の出現から治療開始するまでの期間と、寛解率をみますと、5年までに治療を開始した患者さんは6割以上が寛解しますが5年以上だと寛解率は低くなります。
 腎臓病が怖いのは、自覚症状がないことです。また、腎機能がかなり低下しないと、むくみ、体がだるい、頭が痛いといった症状は現れません。このため、自覚症状がない段階でいかに早く腎臓病を見つけるかが治療上大きなポイントになります。

成田記念病院季刊誌「おだいじに」No.42より