第207回 鼻づまり

2012年09月19日

中村由紀 成田記念病院耳鼻咽喉科部長

 鼻づまりになると、焦げたものを感知できなくなったり、腐ったものが分からなくなるなど臭いを感じなくなります。鼻づまりには、花粉症などのアレルギー性鼻炎、鼻腔を左右に分ける中仕切りの役割を持っている鼻中隔の骨や軟骨が左右どちらかにわん曲している鼻中隔わん曲症、鼻の粘膜が分厚くなって薬などに反応しない肥厚性鼻炎、慢性副鼻腔炎、つまり、蓄膿症、良性や悪性の腫瘍などがあります。
 アレルギー性鼻炎の3大症状は「くしゃみ」「水のようなさらさらな鼻水」「鼻づまり」です。花粉症の場合は、この症状に加えて目の痒み、喉のいがいが、咳などがあります。
 花粉症が鼻づまりを起こすメカニズムはまず、花粉が喉や鼻に入り、鼻の粘膜に付着し、それに対してリンパ球が花粉を異物として認識し、攻撃することによってくしゃみ、鼻づまりが起こります。
 アレルギーを起こす原因物質は、季節性と、通年性に分けられますが、季節性が杉などの花粉症で、通年性は、家の中のホコリやカビなどのハウスダストです。
 アレルギー性鼻炎の治療法は、くしゃみや鼻水、鼻づまりに対する抗ヒスタミン剤、鼻づまりを抑えるコロイトエン剤、ステロイドなどがあります。ただ、ステロイドは副作用が強く、その副作用に対する対応が難しいこともあり、投与には慎重さが求められます。漢方薬は即効性がありますが、副作用もあり、持続時間は短いです。
 血管収縮剤は、即効性はありますが、習慣性になることがあり、効かなくなったり、鼻づまりの原因になります。この薬は、市販されていますが、あまり頻繁に使っていると習慣性に陥り、鼻づまりが治りにくくなるので注意が必要です。
 薬以外のアレルギー性鼻炎の治療としては、減感作療法がありますが、これは免疫療法の一つで、唯一、長期間のアレルギー反応を緩解することが期待できます。具体的には杉やハウスダストなど原因となる抗原のエキスを定期的に注射をしてアレルギー反応を抑えるというものです。ただ、当病院ではこの治療は行っていません。このほかでは、レーザー治療があります。アレルギー反応を起こしている鼻の粘膜をレーザーを照射する方法です。しかし、この治療法は粘膜全体をレーザーを照射できないために効果は部分的なものになります。
 鼻中隔わん曲症は、この病気に対する薬はないので、鼻づまりがひどい場合は、曲がっている骨や軟骨を削る手術を行います。慢性副鼻腔炎は炎症や鼻水を抑える抗生物質の投与、手術、霧状の薬を鼻の中に入れる処置などがあります。