第197回 尿失禁~過活動膀胱を中心に~

2012年04月17日

平林聡 成田記念病院副院長

 排尿の問題は、尿を出す異常 (排尿障害) と、尿をためる異常(蓄尿障害)に分けて考える必要があります。うち蓄尿障害について説明します。
蓄尿障害の症状を蓄尿症状と呼びます。それには
1.尿が近い 2.夜間排尿のために目が覚める 3.急に尿がしたくなって漏れそうになる。あるいは
4.トイレまで間に合わず漏れてしまう
などがあります。
この3、4のような状態を過活動膀胱と呼び、漏れてしまう切迫性尿失禁といいます。
 この数年、過活動膀胱はよく知られるようになり、わが国の患者数は約810万人と推定されていて、今後さらに人口の高齢化に伴い増加すると予想されています。 最近、この状態に対して有効な新しい薬が次々と開発されています。また、この診断、治療は、 泌尿器科の専門医でなくても可能であり、治療による生活の向上も期待できることから、一般のかかりつけ医で治療することが勧められています。ただし、ほかの似た病気との鑑別や、合併する病気を見落とさないことが大切で、診断と治療を助けるために過活動膀胱診療ガイドラインが作成されました。
 このガイドラインによれば、 1.尿をする回数が多い 2.急に尿がしたくなって我慢が難しいことがある 3.我慢できずに尿を漏らすことがある、という症状が 1つでもあれば過活動膀胱の可能性があるとされています。これに該当する方はさらに詳しく質問があり、その症状を点数化して分析し、診断します。    ほかの似た病気との鑑別、合併する病気の有無を見るには簡単な尿検査と、超音波検査をします。排尿の状態 (量・時間)を記録した物(排尿日誌)があれば診断に非常に役立ちます。 治療の主体は、薬とトレーニングです。
トレーニングは行動とも言い、生活指導・膀胱訓練・理学療法・排泄介助などで、これは個々に合わせて行います。薬はガイドラインで、それぞれの薬の推奨度がはっきりと示されています。しかし、個々の患者さんで状況は異なり、また副作用の出方も異なるので、その状態に合わせて薬を選びます。
過活動膀胱で悩んでいる患者さんはたくさんいると思います。しかし、その多くがあきらめてしまっていたり、恥ずかしいなどで受診されていません。過活動膀胱は診断も治療も容易で、ちょっと怖い、恥ずかしい泌尿器科を受診しなくても治療が可能で、治療により生活の質も向上することが期待できます。少し勇気を出してかかりつけの先生に相談してみてください。