第187回 腰部脊柱管狭窄症について

2012年04月07日

清水聡志 成田記念病院整形外科部長

 高齢化社会を迎え、脊柱管狭窄症で外来を受診される患者さんが多くなっています。しかし、患者さんはこの病名をあまり知らないようです。  脊柱管狭窄症とは、加齢によって脊柱管が狭くなって脊柱管の内部にある神経が圧迫されて主に下肢の痛みによって生活の制限を生じる病気です。  下肢痛は、お尻から足にかけて走るような、いわゆる座骨神経痛のような痛みで、そうした痛みを経験した患者さんを対象にしたデータによると、50歳前後から2人に1人が痛みを味わっており、50歳以上からの人の発生頻度か高くなっていることがわかっています。  脊柱管狭窄症は、この病気が20年前と比較的新しいため、あまり知られていないと考えられます。このため、この病気に対する治療の研究も緒についた段階なので骨粗鬆症や椎間板ヘルニアなどのように確立した治療法はまだないのが実情で、医師によって説明が異なることがよくあります。  患者さんからの質問として「足が痛い、しびれる。原因は」「どの診療科で相談すればよいか」「骨粗鬆症と関係があるのか」「神経ブロックの治療は麻酔だからいやだ」「腰の手術はしない方がよいと周りから言われている」といったことなどです。  脊柱管狭窄症に関する因子として①椎間板が前から飛び出し神経が圧迫される②後方の黄色靱帯が加齢によって分厚くなり、神経を圧迫する③関節が分厚くなって神経を圧迫する④腰の骨が不安定になり、神経を圧迫するです。  脊柱管狭窄症の症状は、①一定の歩行の継続ができないが、一定の休憩によって歩行可能となる(間欠性跛行)②足の痛み、しびれ、足に力が入らない③おしっこが出にくい膀胱障害④腰痛です。この中で代表的な症状が①の間欠性跛行です。  治療法は安静にする保存療法、痛み止めや血流を良くする薬を服用する薬物療法、リハビリ、神経ブロック療法などがあります。  当院での治療は、間欠性跛行などの馬尾症状に対しては血管拡張作用のある薬の点滴、足の痛みなどの神経根症状は、痛み止め薬の服用や点滴、神経ブロック療法を行っています。それでも症状が改善せず、患者さんからの希望があれば手術をしています。