第179回 ここまで分かったアルツハイマー病の予防と治療〜認知症にならないために〜

2012年03月30日

成田記念病院神経内科部長 川畑 信也 
第179回 H17.10.28
認知症(以前は痴呆と呼ばれていましたが)は、以下の3つの条件で決められています。 ㈰一度獲得した知的機能が何らかの原因で低下すること㈪低下した機能によって家庭生活や社会生活に支障をきたすこと㈫意識障害がないこと——などです。  認知症を起こす原因として最も多いのが、アルツハイマー病です。  アルツハイマー病では、㈰物忘れ(しまい忘れ、置き忘れ)㈪時に対する概念が混乱する(月日や曜日がわからない)㈫自発性の低下、意欲の減退㈬怒りっぽい—が初期に見られる症状です。  アルツハイマー病では、自分が病気になっているという自覚がありません。従って、家族や周囲の人々がこのような症状に早く気付いて病院で受診することが大切です。  アルツハイマー病の原因としては、老化現象と遺伝があげられます。この2つは現在の医学では治すことはできません。しかし、最近の研究では、アルツハイマー病になる人は、中年期に高血圧や糖尿病、高脂血症を持っている場合が多いことが明らかになってきました。若いときから高血圧や糖尿病、高脂血症の予防や治療をしっかり行うことが後のアルツハイマー病発症を予防できる手だての一つとなります。  アルツハイマー病の治療では、お薬よりも介護がより大切です。患者さまが物を忘れる病気になっている認識を家族や周囲の人々が持つことが最も大切です。患者さまを叱る、なじるなどの接し方はよくありません。できなくなってきたことを手助けする、アドバイスするという姿勢を忘れずに患者さまと接していただきたいと思います。

成田記念病院季刊誌「おだいじに」No.54より