第172回 結核と非定型抗酸菌症の診断と治療

2012年03月23日

成田記念病院 呼吸器科医長 坂野 健吾 第172回 H17.3.30

 肺結核は、1950年ごろをピークにその後減少してきましたが、1997年ごろから上昇し始め、この10年間で、80歳以上の患者さまは2倍以上に急増し、高齢者の増加が目につきます。
 肺結核とは結核菌が人から人に感染する伝染性の病気です。
症状は初期では全く無症状のことでも珍しくなく、検診のときに発見されることがたびたびあります。ある程度症状が進行すると、発熱、食欲不振、体重減少などが出てきます。さらに進行すると、咳、タン、特に血痰、胸痛などが現れます。咳、タンが2週間以上続くときは肺結核である可能性を念頭におき、受診する必要があると考えられます。
 肺結核の治療は基本的には抗結核薬を用います。肺結核が一般的な肺炎の治療と大きく異なる点は、化学療法の目的が臨床症状の改善だけではなく、身体に潜む結核菌すべてを根絶することにあります。薬は1日1回服用し、服用期間は6カ月間が基本です。
 そして、非定型抗酸菌症とは、抗酸菌の中で結核菌群を除く抗酸菌群の総称です。従来、わが国では非定型抗酸菌群と呼ばれてきましたが、現在国際的に非結核性抗酸菌と呼ばれています。起因菌が同定されればそれぞれの名前を付けた疾患名、例えばマイコバクテリウム・カンザシ症、マイコバクテリウム・アビウム症、マイコバクテリウム・イントラセルラー症となり、わが国ではこの3つの菌種が全体の90%を占めています。
 肺結核症の症状、画像診断は似ていますが、一般に毒性は弱く、人から人への感染はなく、日和見感染症(基本に基礎疾患があったり、抵抗力が落ちている場合に発症しやすい)であるといわれています。
 多くの非定型抗酸菌は薬剤感受性に乏しく治療が困難です。経験的に抗結核薬を中心とした多剤併用療法を行いますが、標準治療法は確立されていません。

成田記念病院季刊誌「おだいじに」No.53より