第165回 より安全な血液をお届けするために—輸血用血液に対する安全対策の強化—

2012年03月16日

愛知県豊橋赤十字血液センター製剤課 課長 倉知 透 第165回 H16.8.27

 献血には、2百ミリリットルと4百ミリリットルの血液を提供していただける全血献血と、血液の中の一部の成分を献血していただく成分献血とがあります。献血された血液の中で、赤血球製剤は出血や赤血液が不足する時、血漿製剤は血液凝固因子が足らない時、血小板製剤は血小板数の減少や出血傾向のある時、といったようにそれぞれ足りなくなったものを補充するのが輸血医療です。有効期間は血小板製剤は3日間なので、血小板製剤の確保に血液センターは苦労しています。赤血球製剤は3週間、血漿製剤は凍結できるので1年間となっています。
 輸血用血液のリスクと安全性ですが、1960年代は売血が主流だったために輸血を受けた患者さまの2人に1人は肝炎を発症していました。このため、政府は1964年に輸血医療は献血でまかなうという方針を決め、輸血による肝炎の発生頻度は1970年代には16・2%まで下がりました。また、B型肝炎ウイルスをチェックするHBs抗原等検査を導入しました。現在は核酸増幅検査も導入していますが、完全にB型肝炎ウイルスを見つけることはできません。しかし、この検査法によって確実にB型肝炎ウイルスの輸血によるB型肝炎の発生率は下がっています。
 エイズは、エイズウイルスに感染して抗体ができるまでに時間がかかるためにエイズ抗体検査をしても陽性だと確実に判断することが難しいのが実情です。献血された血液からのウイルス感染を防止するために日本赤十字では凍結血漿製剤は最高で半年間保管してから医療機関に届ける体制作りに取り組んでいます。

成田記念病院季刊誌「おだいじに」No.51より