第164回 ストレスとじょうずにつきあうヒント―認知行動療法の視点から―

2012年03月15日

藤田保健衛生大学 医学部精神医学教室 臨床心理士 野畑 綾子 第164回 H16.7.23

 私たちがストレスという場合、ストレスの元になっているもののことをいいますが、ストレスとは、本来生物が外敵、内的な刺激に適応していく過程そのものです。生きている限りストレスは続きます。
 ストレスには「よいストレス」と「悪いストレス」があります。「よいストレス」は、夢や目標など自分を奮い立たせてくれたり、勇気づけてくれたり、元気にしてくれたりする刺激とその状態のことです。「悪いストレス」は、過労、悪い人間関係、不安など自分の体や心が苦しくなったり、嫌な気分になったり、やる気をなくしたり、周りの人に何らかの迷惑を及ぼしてしまったりするような刺激とその状態です。
 ストレスに対する認知療法とは、自分の不快な感情や適応的ではない行動に影響を及ぼしている極端な考え(歪んだ認知)が何かを自分で発見・把握し、それが現実なのかどうかを検討して、より現実的で幅の広い見方ができるように修正したり、行動してみることで、不快な感情を軽減することを目標としている療法です。
 自分で認知行動療法の手法を用いてストレスを軽くすることができます。その手順は「自分の感情に気づく」「その感情をもたらしている自動思考を見つける」「もっと現実的で、偏りのない見方はできないか検討する」「再度、自分の感情を確認する」「場合によっては、思い切って行動してみる」です。頭の中で考えているだけでは、憶測が、憶測を呼び、不安が募るだけです。
 ストレス対処の前提は①ものの見方は一つではない②完璧な人間はいない③他人と分かり合うのは難しい④相手には相手の事情がある⑤物事は勝ち負け(白黒)ではない⑥物事も人も日々変化している⑦困っても良い――などです。

成田記念病院季刊誌「おだいじに」No.50より