第153回 胸やけはどうして起こるのか ~逆流性食道炎を中心に~

2012年03月04日

成田記念病院 消化器科部長 鈴木 誠司 第153回 H15.8.28 

 「胸やけ」は、胸の下の方が焼けつく、もやもやする、わき上がる感じが重苦しい、といった症状です。ほとんどは逆流性食道炎が原因で発生します。
 逆流性食道炎は、胃で分泌された胃酸が食道に逆流し、食道粘膜が障害を受けるために起こります。胃と食道の境界には、筋肉(下部食道括約筋)があり、食事をしている時、この筋肉は緩んでいますが、食事を食べ終わると筋肉はぐっと締まります。これが正常な筋肉の動きです。ところがいろんな原因(例えば加齢)で、この筋肉の力が低下してしまうために緩みやすくなり、胃酸の逆流が起こるわけです。
 また、胸とお腹の間の境界にある横隔膜の締め付けが緩んでしまい、胃が食道側に飛び出してしまった人(食道ヘルニア)、食道や胃の働きの悪い人、妊娠や肥満などによって胃の圧力が高くなっている人も胃酸の逆流が起こりやすいといえるでしょう。従って、逆流性食道炎になりやすい人は、高齢者、背中が曲がっている人、妊婦さん、肥満の方などが考えられます。
 逆流性食道炎の典型的な症状は、胸焼けのほか、胃のもたれ、ゲップ、胸痛、喉のつかえ感などですが、咳や気管支炎などを起こしてしまう患者さんもいます。
 診断は、問診、すなわち患者さんの訴えをよく聞くことが重要で、問診のみでだいたい診断はついてしまいます。正確な診断には、内視鏡検査(胃カメラ)で食道の粘膜を観察することが必要です。
 逆流性食道炎以外の病気、例えば胃がんや食道がんでも同様な症状が見られることがありますから、これらの病気を否定する意味でも内視鏡検査は受けた方が良いと思います。
 逆流性食道炎の治療は、胃酸分泌を抑える薬物療法のほかに生活スタイルの改善が大切です。すなわち、重い物を持たない、お腹を締め付けない、姿勢を正しくする、肥満にならない、寝る前に飲んだり食べたりしない、上半身を高くして寝る、甘い物や消化の悪い食品は控える、などに注意することが必要です。

成田記念病院季刊誌「おだいじに」No.47より